ITシステム運用を専門領域にしている私にとって、運用負荷の軽減に大きく貢献できそうなクラウド・コンピューティングは深堀する価値のあるテーマの一つです。いよいよ本格的に広まりそうなクラウド利用ですが、世間で言われる「クラウド」の定義は、結構あいまいな事が多いです。
「それって、クラウドというか、ただのホスティングだよね・・・。」なんてよくありますよね。というわけで今回は、クラウド・コンピューティングの3つのサービスモデルと4つの配置モデルの定義について、おさらいしたいと思います。
1.クラウド・コンピューティングの3つのサービスモデルをおさらい
SaaS型
Webプラウザやクライアントデバイスを通して、クラウドプラットフォーム上で稼働するCRMやWebメールなどのアプリケーションプログラムにアクセスして利用するモデル。ユーザーはクラウドプラットフォームのネットワークやサーバー、OS、ストレージの管理・制御を行えず、特定のアプリケーション設定だけを行なうことができる。
PaaS型
サービスプロバイダによってサポートされるプログラミング言語やツールを用いて、ユーザーが用意したアプリケーションプログラムをクラウドプラットフォーム上にデプロイ(利用可能に)して利用するモデル。ユーザーはクラウドプラットフォームのネットワーク、サーバー、OS、ストレージの管理・制御は行えないが、アプリケーションのコントロールと、場合によってはアプリケーションをホストする環境の設定をコントロールすることができる。
IaaS型
OSやアプリケーションを含め、ユーザーが任意のソフトウェアをデプロイして実行可能にするモデル。処理能力やストレージ、ネットワーク、その他の基本的なコンピューティングリソースが、ユーザーに提供される。ユーザーはクラウドインフラの基本的な部分の管理やコントロールを行うことはできないが、OSやストレージ、デプロイしたアプリケーション、さらに場合によってはいくつかのネットワーク構成の限定された設定・制御を行うことができる。
2.クラウド・コンピューティングの4つの配置モデルをおさらい
プライベートクラウド
企業や団体組織など単一の組織によって運用されるクラウドプラットフォーム。自社運用型(on-premise)と他社運用型(off-premise)の2つの形態がある。プライベートクラウドの自社運用型は、システム構成がクラウドの形態を取ること以外は、クラウド以前のコンピュータ運用に最も近い。
コミュニティクラウド
企業や団体などで複数の組織によって共有使用されるクラウドプラットフォーム。プライベートクラウドに近い。共通した利害関係(ミッション、セキュリティ要件、ポリシー、コンプライアンス)を持つ特定コミュニティを支援する。自社運用型と、他社運用型の2つの形態がある。
パブリッククラウド
一般の不特定多数ユーザーを対象とした配置モデル。多くの場合、IT業界での大規模企業がクラウドプラットフォームを所有し、一般ユーザーにクラウドの利用基盤を公開・提供する。Force.comやGoogle App Engine、Amazon EC2などが代表的。
ハイブリッドクラウド
2つ以上のクラウド(プライベート、コミュニティ、パブリック)から構成されるクラウド・プラットフォーム。それぞれが1つのクラウドとしての実体を持つが、標準技術や独自技術によってクラウド間が相互接続されており、データとアプリケーションの相互運用性を実現する。
3.それぞれのサービスモデル/配置モデルのメリット&デメリット
クラウド・コンピューティングを利用するメリットは、
①コストメリット
②高いスケーラビリティ
③公開までの大幅時間短縮
④運用管理の容易さ
⑤高可用性
にあると言われています。
①コストメリットと②高いスケーラビリティについては、サービスによって変わるとは思いますが、よりコストメリットとスケーラビリティを引き出しやすいのはパブリッククラウド>プライベートクラウドとなるでしょう。ただしパブリック型のクラウドサービスはデータを外部に置くことになるため、セキュリティ面での懸念があり、一般的に基幹システムを置くことは敬遠されがちです(とはいえ、クラウドサービスの方がセキュリティ面での設備が優れている場合もあります)。
③公開までの大幅時間短縮と④運用管理の容易さについては、一般的にはSaaS型>PaaS型>IaaS型となるでしょう。ただし、逆にシステム構成の柔軟性はIaaS型>PaaS型>SaaS型となります。WebメールやCRMなど、ある程度標準的な機能が使えれば済むものであればSaaS型やPaaS型を、自社の強みとなるようなシステムで柔軟にカスタマイズする必要があるのであればIaaS型を、という住み分けに今後なるのかもしれません。
⑤高可用性については、基幹系のシステムを動かすにはまだまだ不十分だとは思いますが、それ以外の周辺系の仕組みや情報系の仕組みであれば、問題ないと思います。
参考文献
クラウド・アーキテクチャの設計と解析―分散システムの基礎から大規模データストアまで | |
清野 克行
秀和システム 2010-08 |
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SEなら知っておきたいクラウドコンピューティング用語集おまけ7個
One comment
初めまして トレッキー(HN)と申します。
趣味で・・情報処理を学習しています。
メールマガジン「J Question」の午前問題を解いていますが、
今回の問題で、検索してこちらにたどり着きました。
図解、わかりやすいです。参考にさせてください。
他には・・「プロフィール」 興味深く読ませていただきました。
生き方・・自分が決める。
ジョブズ氏の記事・・などまだまだ読ませていただきたいので
また訪問させていただきます。
個人的には、宮本武蔵、若冲 など、孤高の人に興味あります。