寄生虫のはなし わたしたちの近くにいる驚異の生き物たち | |
ユージーン・H・カプラン 篠儀直子
青土社 2010-12-25 |
今日はいつもと趣向を変えて本を紹介します。
「夫が言うには、お尻の穴から白い虫がぶら下がっているんですって!すぐ来てください!」
おぞましくも、興味をひきつけられてしまう、寄生虫のおはなしです。
本書を読むと、食事前にきちんと手を洗うことの大切さ(特に犬などの動物や魚、虫を触った後に)を学ぶことができます。高度に進化した寄生虫ほど、宿主に与える害は少なくなるので(宿主が死ねば自らも死んでしまうため)、基本的には健康上の害はないのがほとんどです。特に日本のような恵まれた環境で暮らしているなら、たいして心配することもないでしょう。
しかし、中には旅行先で感染してひどい下痢症状を起こす人もいますし、そうでなくても本書に出てくるようなおぞましい生き物が体の中でうごめいているのを想像するだけで、きしょく悪くてたまりません、せっかくなので、面白いエピソードをひとつだけピックアップしてみました。
脳をのっとられたアリの話
この場合のアリはヤマアリ〔Formia〕であるが、彼らは粘膜のボールを食べ、腸内に多くのセルカリアを解き放つ。通常これらは腸壁を食い破ってアリの腹腔内でシストを形成し、感染幼虫のメタセルカリアになる。そのなかの少数がアリの脳に迷いこむ。するとアリは奇妙な行動を始める。
このアリは、群れに合流して巣に帰ることをせず、とがった草の葉に登って、先端に強くかみつく。かみつく力があまりに強いので、このアリの腹部を引っ張ろうものなら、葉っぱから口を放すより先にからだがちぎれてしまうくらいだ。それからアリは、一晩中葉っぱにかみついたままでいる。(中略)お腹を空かせたウシが、早めの朝食、あるいは遅めの夕食を食べに来たら、アリはひとたまりもない。ウシ(または、まれにだが、ヒト)は、草といっしょに感染したアリを食べる。シストに包まれていたメタセルリアはウシの腸内で自由になり、やがて肝臓にたどり着く。こうして、水の関与なしでサイクルは閉じられる。
吸虫(寄生虫の一種)は彼らの成長のサイクルを完成させる上で、ウシなどの脊椎動物の体内に侵入する必要があります。そのために彼らは、第三者であるアリを利用するのです。まず彼らはアリの大好物である粘膜のボールの中に潜みます。そしてアリがそれを食べるやいなや、腸壁を食い破り、脳をのっとるのです。脳を占領された哀れなアリは、葉っぱにかみついてウシに食べられるのを待つようになる。こうしてまんまとウシの体内へ侵入するわけです。
なんとおぞましい!!これがもしアリではなく人だったら・・・なんて想像したくもないですね。
今回は動物の例だけ紹介しましたが、本書にはもちろん、寄生されたヒトの話も出てきます。怖いものが見たいヒトは、読んでみてください。
寄生虫のはなし わたしたちの近くにいる驚異の生き物たち | |
ユージーン・H・カプラン 篠儀直子
青土社 2010-12-25 |
2 Comments
つい一週間前、目黒にある寄生虫館に行ってきました!
様々な寄生虫の標本はもちろん、ミュージアムショップでは研究員が実際に採取した寄生虫入りキーホルダー、寄生虫ストラップ、寄生虫Tシャツなどが販売されていました・・。
さすがにあれを着る自信はありません・・。。
もし行ったことなかったら、一度のぞいてみてください。入館は無料でしたよ!
とっしーさん
寄生虫館、いってみたいんですよ~。
寄生虫ストラップ気になりますねぇ・・・。