モウリーニョの流儀 | |
片野道郎
河出書房新社 2009-09-03 |
海外サッカーを知る者なら誰でも名前くらいは聞いたことがあるであろう、現レアル・マドリー監督のモウリーニョ。サッカー界の大御所であるクライフに向かって「チャンピオンズリーグ決勝で0−4で負ける方法なら教わりたくない」と述べるなど、そのスペクタクルな発言は話題性抜群で、時にその攻撃的な姿勢が周囲やメディアから批判されることもあります。がしかし、ヨーロッパの部隊では中堅に過ぎないFCポルトをチャンピオンズリーグ優勝に導き、続くチェルシーでもリーグタイトルを連覇、インテルではリーグタイトル・国内カップ戦・チャンピオンズリーグの3冠を達成するなど、その監督としての手腕と実績はもはや世界最強です。本日紹介するのは、そんなモウリーニョのマネージメント哲学が学べる、ファンならば必見の一冊です。
1.モウリーニョはなぜこれほどまで選手から崇拝されるのか
モウリーニョはインテルの監督就任の際、選手たちに以下のメッセージを伝えたようです。
私が選手たちに伝えたメッセージは非常にシンプルだ。私と一緒に働くのはとても簡単だが、とても難しいことにもなり得る、ということだ。簡単なのは、全てがよく整理され、きわめて明確に示されるし、面と向かって説明されるから。しかし、もし私のメンタリティを共有できなければ、困難を抱えるだろう。私は全員が私と同じように考え、プロフェッショナル精神、情熱、リスペクト、そして限りなき野心を持って仕事に取り組むことを望んでいる。私は、大きな危険を伴う高い目標を常に設定する攻撃的な人間だ。チームもまたそれを共有してくれることを望む。それができれば、全員が一体となって大きな結果を手にすることができる
モウリーニョの指導を受けた選手の多くは彼を崇拝するようになるのですが、その秘密がここにあると思います。彼のもとでは、選手たちには何が求められ、どうすれば評価され試合に出られるのか、そして何をしてはいけないのかが明確に説明されるのです。たとえ主力選手であろうとも、練習に遅刻してくればそのまま家に追い返され、試合の日にもメンバーに招集すらされません。彼のルールのもとでは例外がなく、すべての選手がフェアに扱われます。だからこそ、選手たちは安心してそのルールのもとで努力ができるのです。
2.モウリーニョの人生哲学
では、なぜモウリーニョはこれほどまでに原則に忠実に振舞うことができるのでしょうか?
これほど困難で競争の激しい世界を生き抜いていくのに、自分より優秀な監督がいると考えることはできない。自分の仕事に取り組むときには、誰に対しても何に対しても恐れを抱くことは許されない。リスクを冒すことを怖がってはならない。それが競争の世界で生きていくプロフェッショナルが持つべき人生哲学だ。
これはある記者会見での彼の発言です。自分よりも優秀な監督はいないという確信を裏付けるために、自らに嘘を付くことなくどれだけの仕事を積み重ねてきたのか、そのためにどれだけの才能と努力と情熱が必要だったのか、私には想像がつきません。彼はメディアの圧力から選手を守ることでも有名ですが、メディアの圧力を忽然とした態度で正面から受け止め、それに屈したり妥協したりすることなく、ときには喧嘩さえも辞さない激しさで跳ね返せるのは、確固たる原理原則と自らの流儀を確立しているからなのです。チームのリーダーのひとりでありながら、モウリーニョのもとではほとんど出場機会を得られなかったマテラッツィが「モウリーニョは最高の監督だ。すべてにおいてフェアで筋が通っている。1年間ろくに出番すらもらえなかった俺が言うんだから間違いない」と断言していますが、こんな監督のもとでならいっしょに働きたいと思うのもうなづけます。
名言も数多く掲載されとり、ファンならば必ず楽しめます!是非読んでみてください。
モウリーニョの流儀 | |
片野道郎
河出書房新社 2009-09-03 |