貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する | |
橘 玲
講談社 2009-06-04 |
もし私たちが会社に所属するのではなく、自分自身が会社となって業務委託契約を結べるとしたら、どうなるでしょうか?
まず収入に対する税負担率が大幅に低くなる。さらには、まとまった資金を無税で運用できるようになる。そのうえもっと驚くことに、多額のお金をただ同然の利息で、それも無担保で借りることができる。
アメリカでは会社に雇われない生き方を選択した「フリーエージェント」が増えていますが、このフリーエージェントが法人化したものを著者はマイクロ法人と呼んでいます。もし私たちがマイクロ法人化したらどうなるのか、ということを今日は紹介します。
1.税負担が減る
サラリーマンをマイクロ法人化すると、税負担を大きく減らすことが可能となります。法人と家計を連結決算することで、税務上の所得がないにもかかわらず財務上の利益が出ている状態を作り出せてしまうからです。
ざっくりとした解説をします。まずサラリーマンをマイクロ法人化し、家をオフィスとして登録することで、生活経費の一部を法人の経費として申請できるようにします。家賃や水道光熱費、通信費、書籍の購読料などの半分を損金として収入から差し引くことができるのです。すると経費分は課税対象とならないため、課税対象となる所得額が低くなり、税負担が大きく減るというわけです。ちなみにこれは白色申告や青色申告の個人事業主でも同様の損金計上が認められています。加えて家族を役員や従業員にして、役員報酬や給与を法人の損金にしつつ給与所得控除をえれば、税務上は赤字なのに、財務上は利益が出ている状態を作ることも可能となってしまいます。
2.簡単にできるマイクロ法人
マイクロ法人をつくる手続きは、実はとても簡単です。初期費用としておよそ25万円と、維持費用の均等割が毎年7万円かかりますが、それだけです。
あとは所得に応じて税金を支払っていれば、誰でも代表取締役社長になれてしまいます。詳しくは本書をお読みください。
3.実際に可能か?
では実際にこうしたことが日本で実現可能なのかというと、残念ながら多くの人にとっては絵に描いた餅でしょう。
外資系のコンサルティング会社などで社員の法人化を認める例があるだけで、全国に五〇〇万社のサラリーマン法人が誕生する気配はない。(中略)話としては面白いが、それはただの絵空事である。
本書は約370ページあるのですが、366ページ目に上記の記述が登場します。最後の最後でそれかよ!って感じもしますが、確かに話としては面白いので、興味があれば読んでみてください。
貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する | |
橘 玲
講談社 2009-06-04 |